日常生活は、ほぼ自立しています。
歩行は不安定で手すりなどの支持物が必要です。
【第1回】暮らしに理学療法士の視点を:最適な福祉用具の選び方~自立していてもふらつきがある場合(前編)
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日々の生活をサポートする福祉用具、使用すればご自身やご家族が生活しやすくなるのではと思いつつ、何を選べばよいかわからない方が多いのではないでしょうか。情報があっても悩んでしまうのは、身体の状況によって必要な福祉用具や環境は変わり、どの方にも同じサポートが当てはまるわけではないからです。
この連載記事では、以下の3人のケースを例に身体機能をみる専門家である理学療法士が、身体への負担を減らす生活の工夫や福祉用具の選定についてアドバイスします。お話を伺ったのは、株式会社くますまの河添竜志郎さん(理学療法士)です。
座ることはできますが立ち上がりは介助が必要です。
生活内に介助が必要な場面が多くなっています。
支えのない状態で座っていることができません。
日常生活は多くの介助を必要とします。
自立していてもふらつきがあるAさんを支える福祉用具とは?
今回取り上げるのは、ふらつきがあり、家の外はもとより家の中の移動でも転びそうになることがあるAさんです。立ち上がるときやしゃがみ込むときに支えがないと危ないと感じています。とはいえ、自分でできることも多いので、どんな福祉用具を用いればちょうどよいのか、わからずに困っているようです。
以下の4つの「生活を考えるうえで大切なポイント」を踏まえて、どのような福祉用具がAさんには適しているのか、見ていきましょう。
この記事では、それぞれの場面ごとにアドバイスをしていきます。今回は、「家の中の移動」「家の外の移動」「睡眠」の3つを取り上げます。
※グレーの項目は後編で紹介します。
家の中の移動:転倒を防ぎましょう!
足腰が弱ってくると家の中での移動も不安定になり、転倒の危険が出てきます。家の中での転倒は敷居や段差のある場所で多くみられます。
また、それ以外に段差も何もない平坦な場面でも起こります。特に、椅子から立ち上がってすぐの歩き始めや、トイレの中など方向転換が必要な狭いところで、足がからまってバランスを崩し、転倒しやすいので注意が必要です。
危険な場所の移動には、身体を支える手すりや杖、歩行器などの歩行補助用具といった安定した支持物があると安心です。また、床からの立ち上がりでは、より転倒の危険が高まるので、畳にお布団の方はベッドへ、そしてくつろぐときも床に座っている方は椅子とテーブルに替えることをお勧めします。
しかし、手すりや歩行補助用具は設置や導入をしても、うまく使わないと効果は出ません。使うための練習が必要ですので、訪問リハビリテーションなど地域で活動している理学療法士に相談しましょう。
また、転倒しにくい身体をつくることも大切です。しっかりとした物につかまって椅子から立ち上がる練習や、安定した椅子の背を持って大きく足踏みするなどを習慣づけると足腰の強化になります。朝夕のニュースの天気予報の間だけ頑張るなど、スキマ時間を活用すると継続できるかもしれません。
手すりは種類が豊富!用途に合わせた使用を
手すりには、壁や床、天井にしっかりと固定して使うもの(固定型)と、床に置いて使うもの(設置型)があります。
固定型の手すりは、柱のあるところなどにしっかりと固定することが大切なので、壁の裏の構造がわかる専門の方や業者に設置工事をお願いしたほうがよいでしょう。設置型の手すりは、壁のないところでの使用や、手すりの必要な場所を決める際にとりあえず試してみるときにも便利です。
壁に固定する場合の手すりの高さは、杖などの高さが目安にはなりますが、手すりの見本などを実際に持ってきていただいて、どのくらいの高さが使いやすいかご本人に試してもらって決めるとよいでしょう。
福祉用具ワンポイントレッスン① 杖と歩行器の選び方
家の中で使える歩行補助用具には杖や歩行器があります。歩行器は、杖よりも安定しているので、常に支持物を必要とする人が対象です。ただし、両手で使うものなので、片麻痺などで片手が十分に使えない人には向いていません。また、トイレなどの狭い空間や方向転換をしなければならない場所では使いにくいこともあります。そのような場合では手すりと併用することをお勧めします。
杖を使っていると、杖の置き場や、倒れてしまい拾えないなどといった困りごとがあります。ひっかけておけるストッパー付きの杖や、ひもがついている杖だとその心配がありません。
特にひもを手首にかけておくと、ドアノブの開閉などの際に杖から手を離すことができます。ただし、ひも付きは手にまとわりついて危険な場合もあるので注意して使用しましょう。
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