【番外編】暮らしに理学療法士の視点を:最適な福祉用具の選び方~福祉用具や住宅改修に利用できる制度とは

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介護保険で福祉用具のレンタル・購入をするには

"借りる"福祉用具、"購入する"福祉用具の違い

福祉用具にはレンタル(貸与)できるものと、購入するものがあります。

まず、福祉用具は原則としてレンタル(貸与)となっています。これは、利用者さんの介護度や身体の変化、生活の変化に合わせて使う福祉用具も変わるため、そのときに最適なものを提供できるようにという目的があるからです。

しかし、排せつ用具や入浴用具などのように、他の人が使ったものを洗浄消毒するだけでは抵抗感の強い福祉用具や、継続して使用することで形や材質の性質が変化する福祉用具などは再利用ができないため、レンタルには適しません。このような福祉用具は販売されているものを購入するという仕組みとなります。

なお、福祉用具のレンタルも品目のすべてがレンタルできるわけではありません。例えば、寝具から自分で起き上がったり立ち上がったりできる人は、介護用ベッド(特殊寝台)をレンタルできません。

このように、福祉用具のレンタルや購入は、本人の自立の支援や安全の確保、介護者の負担の軽減を目的としているので、必要なものを必要な時期に導入することとなります。このあたりは、ケアマネージャーや担当の理学療法士、福祉用具専門相談員と十分に相談してください。

厚生労働大臣の告示によって、以下のものが対象種目として定められています。

原則、貸与される用具

  • 車椅子(付属品含む)
  • 特殊寝台(付属品含む)
  • 床ずれ防止用具・体位変換器
  • 手すり・スロープ
  • 歩行器・歩行補助杖
  • 認知症老人徘徊感知機器
  • 移動用リフト(つり具の部分を除く)
  • 自動排泄処理装置

販売される用具

  • 腰掛便座・自動排泄処理装置の交換可能部
  • 入浴補助用具(入浴用椅子、浴槽用手すり、浴槽内椅子、入浴台、浴室内すのこ、浴槽内すのこ、入浴用介助ベルト)
  • 簡易浴槽
  • 移動用リフトのつり具の部分

福祉用具の対象者と補助額について

福祉用具のうち、何をレンタル・購入できるかは、品目ごとに要支援・要介護度によって決まっています。そのため、希望する物品が借りられない場合もあります。

介護保険でレンタルを利用する場合の利用者の負担は、原則として実際のレンタル価格の1割となります。ただし、一定以上の所得のある方は2割や3割といった負担になりますので注意をしてください。

また、購入できる福祉用具は、1年間で10万円を上限に、原則1割の負担となります。レンタルと同様に所得によって負担額が変わることもあります。販売されているものは、原則として破損や身体の変化がない限り同じ種類のものを再度購入することはできません。しっかりと周囲の専門家と相談したうえで購入しましょう。

介護保険を住宅改修に利用するには

介護保険を使った住宅改修の対象者と補助額について

介護保険による住宅改修の補助金は20万円を上限として支給され、原則として1割の負担です。所得に応じて2割、3割の負担となることがありますので注意が必要です。

住宅改修は、何度もできるわけではありません。玄関周辺に手すりが必要だからといって手すりを付けて20万円を使い切ってしまうと、トイレやお風呂に手すりを付けたいときには介護保険を使えずに他の制度の利用か自費となります。しっかりと計画を立てて、優先順位の高い場所から改修をおこなうことをお勧めします。

ただし、要介護1の人が要介護4になるなど、介護度が3段階以上変わった際には必要な環境が変わります。このときには、もう一度補助金が支給されます。また、やむを得ない事情で転居した場合にも再度支給されます。このあたりは、ケースバイケースとなるのでケアマネージャーさんと相談してください。

また、福祉用具のレンタルと違って、先に工事箇所や内容などを役所に報告(書類提出)をしてから、審査を経て、工事となることが一般的です。必要だからと申請前に先に工事をしてしまうと支給を受けられなくなることがありますので注意してください。

介護保険の住宅改修費の支給対象の工事は以下に定められています。

  • 手すりの取り付け
  • 段差の解消
  • 床または通路面の材料の変更(滑りの防止及び移動の円滑化等のため)
  • 引き戸等への扉の取り換え
  • 洋式便器等への取り換え
  • 1~5に付帯して必要となる住宅改修

介護保険で支給されない住宅改修のケースとは?

先に述べたように、一度住宅改修をしても介護度が3段階以上変化した際や転居した際には再度補助金が支給されることがあります。しかし、新築や増築、老朽化に対する補修などでは支給されません。新築時に手すりの部分を住宅改修費で取り付けるということや、住んでいる家が老朽化したので床材を替えたいという理由も対象外となります。

その他には、面倒をみてくれているお子さんの家で過ごすことが多いので、お子さんの家に手すりを付けたいといった場合も、被保険者証に記載されている住所以外の場所の改修となるため対象外となります。介護保険を使いたい場合は、先に住所変更をしなければいけません。

基本的に住宅改修費の補助は、介護保険の対象者が今住んでいる場所の生活の質を上げるために必要な環境改善を、公的な費用で補助するということが原則です。個人の資産価値を上げるものや本人以外の人のための改修は対象外であることは注意しておきましょう。

住み慣れた家で安心して暮らし続けるために

いかがでしたでしょうか。住み慣れた家でずっと暮らし続けたいという人は多いものです。一方で、身体の機能が弱くなることで、その家が住みにくくなると、生活の質が下がってしまいます。

介護保険制度は丁寧に理解して利用すれば、みなさんの生活を支えてくれる仕組みになっています。制度を上手く利用して住み慣れた家で自分らしく生活できるように、まずは身近なケアマネージャーや理学療法士などの専門職に相談してみてください。

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