【第3回】暮らしに理学療法士の視点を:最適な福祉用具の選び方~立ち上がりに介助が必要な場合(前編)

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家の外の移動:安全に移動できるように練習して使いましょう!

屋外で車いすを使う場合には、自ら操作するのはなかなか大変です。特に道路は排水の関係で、かまぼこ型になっていて道路の端にわずかな傾斜があります。また、歩道や坂道などがあるため、ご本人が操作するのであれば電動タイプ、介助者が操作するのであれば介助者が操作しやすいタイプが望まれます。

電動タイプにはジョイスティック(移動したい方向に傾けて操作できる手元のレバー)で操作ができるものと、ハンドルで操作する「電動3輪」、「電動4輪」と呼ばれるものがあります。

ジョイスティックタイプは、乗っているご本人が自ら操作し折り畳みができるだけでなく、アシスト付自転車のようにバッテリーを外して室内で充電できる簡易型が多く使われています。また、このタイプには介助者がハンドルを持って押すときに、電動アシストが利いて楽に操作できるものもあります。

しかし、どちらのタイプにせよ、電動車いすの操作は練習が必要です。まずは平坦な場所で自在に操作ができるようになってから、少しずつ公道に出て安全に運転できるようになることが大切です。

地域で働く理学療法士とともに練習をし、安全に屋外にお出かけできるようになりましょう。なお、介護保険のレンタル(貸与)で借りたいとお考えでも、介護度によってはレンタルできないこともありますので、ケアマネージャーさんと相談してください。

福祉用具ワンポイントレッスン① 車いすを楽に動かすコツ

車いす操作のポイント

  • いきなりご本人に乗ってもらうのは危険なため、介助者はまず健康なご家族を乗せて操作の練習をしましょう。
  • 転落の防止のために、ご本人の姿勢を安定させましょう。
  • 声掛けは操作する前だけでなく、操作中も忘れずにおこないましょう。

操作の練習やその他の注意点については、使い始める前に理学療法士に相談してください。

そして、操作する方は、車いすに乗る側をぜひ体験してみてください。相手の立場に寄り添った優しい介助方法が身につきます。

睡眠:寝返りや起き上がりがしやすいかチェックしましょう!

Bさんは、自分で寝返りや起き上がりをするのが少し難しくなってきます。特に起き上がりは上半身の重さを持ち上げる力が必要なので難しくなりやすい動作です。このような場合には、介護用ベッドを使って上半身を少し起こしてから、自分の力で起き上がるようにすると、スムーズに起き上がることができます。

ただし、楽だからとベッドの背を全部起こしてしまうのではなく、ご本人の力を使えば負担なく起きることができる高さまでに留めてください。そうしないと、起き上がりのための身体の使い方を忘れてしまうので注意が必要です。起き上がってベッドの端に座る際には、介助バーと呼ばれるベッド取付用の手すりがあると安定して座ることができます。

注意しなければならないのは、ベッドの端に座っている状態から寝るときです。そのままバタンと倒れるように横になる方を見かけることがありますが、反対側のベッドの柵に頭をぶつけたりすることもありますので危険です。

ベッドでの動作の練習をするときには、起きるばかりではなく、静かに横になって身体をまっすぐにし、掛布団をしっかり掛けるまでの動作を練習しましょう。ぜひ理学療法士と一緒に練習してください。

また、介護用ベッドは動作を助ける機能を利用するものですが、安眠にはマットレスの質が大切です。寝具には個人の好みもありますので、試すことができるのであればいくつか試してみて、安眠でき、かつ身体を動かしやすいものを選びましょう。

福祉用具ワンポイントレッスン② ベッドからの移動を楽にする福祉用具

車いすへの移乗は生活を広げるうえで大切な動作です。ベッドなどから一度立ち上がって車いすに移乗する「立位移乗」と、座ったままおしりをずらして車いすに移乗する「座位移乗」があります。

座位移乗は、車いすのひじ掛けの部分を外したり、跳ね上げたりすることが必要です。なおかつ、車いすとベッドなどの移乗対象物の高さは、ある程度同じ高さに揃っている必要があるため、介護用ベッドには高さの変わる昇降機能があると便利です。

座位移乗をおこなう際におしりを持ち上げることができず、うまく横に移動できない場合には、移乗用のボードがあると、ベッドと車いすの間に橋のように渡してその上を滑るように移動できます。

なお、座位移乗、立位移乗のどちらの場合でも、介助バーと呼ばれるベッド取付用手すりがあると、支えとなる手すりを握って身体を安定させたうえで身体を運ぶことができるので取り付けておくことをお勧めします。

移乗は、介助者が腰を痛めやすいなど負担の多い介助動作です。また、移乗の際にご本人が転倒して骨折するという事故が多いのも特徴です。介助者の負担が少なく、なおかつ安全な方法を選択することが、安心してベッドから離れて生活範囲を広げることにつながります。理学療法士とともに適切な移乗方法を選択して、しっかりと練習して安全な移乗をおこないましょう。

Bさんの行動範囲を狭めないために

今回ご紹介した、自分で座ることはできてもベッドからの立ち上がりが難しいBさんのような方には、行動範囲を狭めないように、自分で操作ができる車いすなど自立を助けるものを選ぶことも大切です。

しかし、ご自身の身体に合っていないと、逆に身体の機能を低下させてしまう場合があります。お近くの理学療法士などに相談して身体の状態や使う場所に合った福祉用具を選び、適切に使用しましょう。

次回は、Bさんの日中の過ごし方、入浴、トイレを取り上げ、それぞれのシーンで適切な対策と福祉用具についてご紹介します。

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