【第4回】暮らしに理学療法士の視点を:最適な福祉用具の選び方~立ち上がりに介助が必要な場合(後編)
座りやすい椅子を用意しましょう!
ベッドから離れた後に座る椅子も大切です。たとえ、ちょっと座ってみて心地良いと感じた椅子でも、長時間は同じ姿勢で座り続けられません。
座り心地が良くても、しばらくするとおしりが痛くなったり、腰や肩、首などに負担を感じたりしてしまうので、身体を動かして座り直し、姿勢を変えます。身体への負担を軽くするためには、身体の重さがかかり続ける場所を変えることや、身体を動かすことで血液の流れを良くし、腰や肩などへの負担を軽くすることが欠かせません。
そこで、椅子選びの際に大切なのは、座面や背もたれには適度なクッション性があり、座り直しがしやすいように、床に足が届くこと、そして、姿勢を変えるために身体を預けやすい肘掛けがあることなどです。
理想は、車いすでリビングまで移動してきてお気に入りの椅子に座ることですが、リビングの広さや移乗の手間から簡単には移動できない場合もあります。その場合、車いすを選ぶ際には、座りやすい座面や背もたれのクッション、座面は足が届きやすい高さであること、肘掛けが適切な高さに調整できることなどが求められます。
介護保険で車いすやクッションをレンタルするのであれば、いくつか試してみて長時間過ごせるものを選ぶようにしたいものです。理学療法士に相談してみてください。
また、ご本人も気軽にベッドから離れられるように、介助者の負担がなく頻繁に移乗ができることも重要なポイントです。そして、もちろん、疲れたときはベッドなどで横になって身体を休めることも大切ですので、無理はせず、身体の調子を見ながら活動しましょう。
福祉用具ワンポイントレッスン① 誤嚥を防ぎ、食事を楽にする工夫をしましょう!
ご高齢になると飲み込む力が弱くなり“むせる”ことが多くなってきます。“むせ”は本来食道から胃へと流れるべき食物や唾液などが、誤って気管へ入ってしまった際に、気管の外に出そうとする身体の反射です。誤って気管に入ることを誤嚥(ごえん)といいます。誤嚥は肺炎につながりますので注意が必要です。
誤嚥を防ぐためには、首から口周りが固くならないように定期的に大きく動かしたり、首筋から顎周りをマッサージして唾液が出やすくするなどがよいでしょう。また、食事の前には、大きく口を開けて、早口言葉を唱える、もしくは「あ!」「い!」「う!」「え!」「お!」「あ!」「お!」と発声するなど、大きな声を出すことは誤嚥の予防につながりますので、習慣にできるとよいですね。
誤嚥予防の体操
その1 首や肩を大きくゆっくりと回す運動をしてみましょう
適宜、回す方向を逆にしておこなってみてください。
その2 大きく口を動かして大きな声を出しましょう
その3 歯をかみ合わせずに、あごだけ左右に動かすトレーニングをしましょう
入浴:段差を解消しましょう!
Bさんであれば、入浴の際には浴室まで車いすで移動することになります。浴室まで車いすで入って、シャワーチェアに移乗し、一部介助してもらいながら、身体を洗って浴槽に入るという手順です。
その際に脱衣所と浴室の間に段差があると車いすは入ることができません。そのため、段差をなくす住宅改修が必要です。また、同時に浴室の扉は開けた時の横幅が広い3枚扉などに変更できるとよいでしょう。浴槽への出入りは、バスリフトと呼ばれるような、浴槽の上に置いて使えるリフトを使うと、介助者の負担が減り、浴槽内からの立ち上がりが楽になります。
なお、浴室で滑って転ばないように、床に浴室用のマットを置く、もしくはこまめに掃除をして床に水気やシャンプーなどが残らない状態を保ちましょう。手すりを設置するのもよいです。