【第2回】東日本大震災から10年~理学療法士として今伝えたいこと:ハザードマップの活用術
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3月は、「東日本大震災から10年〜理学療法士として今伝えたいこと」として、災害に備えるための情報を読者のみなさんにお伝えしています。前回の記事では、いざという時の車いすの避難についてご紹介しました。では実際に避難する場所や避難経路はどうなっているのでしょうか。
今回は、実際に車いすで向かう場所についてイメージをするために、「360度動画」を導入している徳島県美波町のハザードマップを用いて、避難を視覚で体験してみましょう。
前回に引き続き、徳島文理大学の柳澤幸夫さん(理学療法士)にうかがっています。
【特集】東日本大震災から10年~理学療法士として今伝えたいこと
ハザードマップと360度動画
ハザードマップとは、自然災害が発生したときに、危険と思われる箇所や災害時の避難場所・避難経路などを地図などにまとめたものです。一般的に防災マップ、被害予測図、被害想定図、リスクマップなどと呼ばれています。
ハザードマップの確認は大切です。しかし実際の経路には思わぬ障害物があったり、坂道の程度や階段の角度が想像していた経路と異なったりすることもあるので、現地の様子の理解が欠かせません。ハザードマップで近くの避難所(指定避難所)や避難場所(指定緊急避難場所)などの位置情報を得るだけでなく、場所の視覚的情報として自ら現地に向かい確認することが必要です。
ここで活躍するのが360度動画です。通常の動画はカメラのレンズが向いている方向(一方向)を録画し、映像として見るものです。もちろん一般的な動画で避難経路を確認する場合でも、前方の情報は確認できます。一方で足元の路面情報や周囲の建物との位置関係等の情報は得ることが困難です。
360度動画はというと、すべての方向(全方向)を録画し、“見える化”することが可能です。そのため、車いすに乗るご家族と同じ視点で、一緒に現場を確認することができます。
そこで、私たち(筆者ら)は、徳島県美波町の日和佐地区で、実際に360度動画を活用したハザードマップを作成しました。同地区の津波避難場所は、55ヶ所。徳島文理大学の学生と協働し、津波避難場所の入口付近、または避難場所への看板がある場所から最終到達地点まで撮影しました。
避難場所を視覚的に体験してみましょう!
撮影された360度動画は、徳島県美波町「津波避難マップ」に掲載されています。
「津波避難マップ」では、地図上の青字をクリックして360度動画の掲載されている画面を開き、「360度動画を見る」をクリックすると動画が再生されます。このように地図と動画をリンクさせたハザードマップを使うことで、避難経路の状況をより詳しく把握できます。
一例として、実際の避難を視覚的に体験してみましょう。こちらは美波町の緊急避難場所に指定されている「金比羅山」の動画です。
いかがでしょうか。思っていたより階段の高低差や通路の狭さを感じたり、ご自宅からの避難所・避難場所や経路を見たいと思われたりしたのではないでしょうか。
高齢の方や障害のある方の避難を考えると、避難経路がどのような状況であるのかを360度動画で事前に確認できることは大きな意味を持つと考えられます。また、病院から退院する予定の方や、すでに在宅でケアを受けられている方は、これらの避難経路の動画を視聴することで避難イメージを得て、車いすの使用可否を確認することができます。
今回の美波町の360度動画をご覧になって、ご自身の避難経路上で気になった点があれば、在宅ケアの関係者ならびに地域の自主防災会などに相談して、個別の避難計画の作成などに取り組んでみてはいかがでしょうか。
さて、ここでお住まいの地域でも美波町のような360度動画を見たいと思った方もいらっしゃるかと思います。では、360度動画の取り組みをご自身の地域でも取り入れるためにはどうすればよいのでしょうか。ここから先は応用編として、読者のみなさまの地域に360度動画を取り入れるための取り組みを紹介します。
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