【第9回】シカクの人物図鑑 福山真樹さん:医療関係専門イラストスタジオの代表として活躍する理学療法士

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「シカクの人物図鑑」シリーズでは、理学療法士としてお仕事をされていて、その他にも素敵な特技をお持ちの方、別のフィールドでも活躍されている方などをピックアップして紹介していきます。

第9回目となる今回は、理学療法士としてクリニックで勤務する傍ら、医療関係専門のイラストスタジオ「福之画(ふくのえ)」の代表としてイラスト制作をおこなう福山真樹さんをご紹介します。

シカクの人物図鑑:プロフィール

福山 真樹(ふくやま まさき

■年齢:38歳

■現在のお仕事:
①茂澤メディカルクリニックで理学療法士として勤務
②医療関係専門イラストスタジオ福之画/代表

■今のお仕事を始めるまでの経歴:
2006年 医療法人養和会養和病院 入職
2007年 社会医療法人仁厚会米子東病院 入職
2013年 株式会社エルフィス 入職
2014年 医療法人養和会養和病院 入職
2018年 医療関係専門イラストスタジオ福之画 設立
2020年 医療法人社団聖幸会茂澤メディカルクリニック 入職

■最近あったちょっと気になること:
先日、初めて任天堂Switchで遊んだとき、マリオカートが昔より格段に進化していることに感動しました!普段はゲームをしませんが、いつか息子たちと一緒にゲームができることを楽しみにしています。

■SNS

Facebook Twitter Instagram

リハビリ現場のあるあるを漫画に!「人々の健康へつなげる」をモットーにイラストを描く、福山真樹さんの人物図鑑

はじめに、福山さんの現在のお仕事を教えてください。

福山さん:東京にある茂澤メディカルクリニックにて理学療法士として勤務し、運動器疾患を中心に多数の患者様を担当しています。

また、医療関係専門イラストスタジオ福之画の代表として、医療・介護・福祉に関する教育・広報の活動をイラストでサポートしています。主に教育用の授業資料・セミナー資料・書籍挿絵や、学会・団体・企業の広報に使用するイラスト・漫画を制作しています。そして、名刺やアイコン用の似顔絵などの作品提供をおこなっているほか、イラストを活用した理学療法に関するセミナー講師としても活動しています。

医療関係専門イラストスタジオ福之画 ウェブサイト

理学療法士のほかに、イラストレーターとしても手広く活動されているんですね。福山さんはなぜ、理学療法士資格を取得しようと思ったのですか?

福山さん:祖父の影響が強いです。真面目で家族想いだった祖父は、病院の事務長を務め、その後は町の助役に就任。字がきれいでお寺の書字を担当したり、祭のやぐらに立ち美声を披露したりと、すごいおじいちゃんでした。

葬儀にはたくさんの方にご会葬いただき、孫の私に「あなたの祖父にお世話になった」と、そのときの様子を話してくれました。家族だけでなく、多くの方を救っていた祖父に憧れ、「仕事に就くなら、人へ貢献できるものにしよう」という思いがあり、患者様に寄り添い身体と生活をサポートする理学療法士を選びました。

理学療法士の仕事には、可能性を感じています。同じ疾患名であっても人それぞれ現在に至るまでの経緯があり、生活があります。それらに向き合い、ともに課題解決へ向けて歩めることに責任とやりがいを感じていますし、活躍の場もスポーツや地域、企業等、さらに広がると考えています。

おじいさまのように人に寄り添う仕事に就きたいという想いで理学療法士になったのですね。イラストのお仕事を始めたきっかけも教えてください。

福山さん:自分だからこそできることは何だろう?と試行錯誤を繰り返している中で、「自分だけの強みとは、すでに持っていて周囲からの反響を得ているもの」という言葉に出会いました。そこで、私は幼い頃から絵を描くことが好きで、大人になってからも季節の絵や似顔絵等を描いた際に、作品を周囲が喜んでくれていることに気づいたんです。

まずはイラストを何でもいいから描いて発信してみようと、当時大好きだったドラマの登場人物の似顔絵を描いてSNSへ投稿したところ、驚いたことにそれがきっかけで医療関係の機器を紹介するイラストを描くお仕事をいただきました。その後も口コミで依頼が続くようになり、イラストレーターとして活動するようになりました。

そして2018年、理学療法士の知識と経験を活かした作品を医療関係職種へ提供したことを機に、「医療・介護・福祉の発展に貢献することで人々の健康へつなげる」ことを理念として、医療関係専門イラストスタジオ福之画を立ち上げました。

SNSへの投稿がきっかけとは、今の時代ならではですね!イラストレーターとしての主な活動内容や、最近取り組んだことがあれば教えてください。

「臨床あるある」のワンシーン(株式会社WorkShift「ワークシフトのブログ」より)

福山さん:活動の1つとして、リハビリテーションの「臨床あるある」を描いています。臨床で起きているさまざまな出来事を、実際は声として挙がらないような患者様やご家族、そして、スタッフの心の内までイラストにすることで、現場を客観視することができます。

現場によって課題とされるべき出来事が認識されていない、もしくは認識しつつも解決への取り組みができていない、という状況が少なからずあります。「臨床あるある」のイラストを見ることで、多くの現場で課題とされている出来事が自身の現場にも起きていることに気づける、そして課題解決へのきっかけになることを願っています。

映画「栞」の監督で、ご自身も理学療法士資格を持つ榊原有佑監督(左)と福山さん

福山さん:また最近では、理学療法士の資格を持ちながら映画監督としてご活躍されている榊原有佑監督とお話しする機会をいただきました。榊原監督の映画「栞」は、理学療法士の主人公の成長を通して、人としてのあり方を考えることができる素晴らしい作品です。

多くの方へ作品の魅力を伝えたいという思いで、作品のイラストをSNSで個人的に描いて発信したのがきっかけでした。榊原監督からは作品への思いと、アドバイスとして「表現者としてこだわりを大切にする」というお言葉をいただけたのが印象に残っています。

映画「栞」のイラストはSNS公式アカウントで、広報として使用していただきました。そして、出演者の方々へイラストをプレゼントしたところ、主人公を演じた俳優・三浦貴大さんにもお会いしてお喜びの声をいただけたこと、他の出演者の方々からは榊原監督伝いにご感想をいただけたことがとてもうれしかったです。

福山さんが映画「栞」の素晴らしさを伝えるために描いた作品のひとつ。榊原監督や出演者の方々へプレゼントもした
映画「栞」が伝えたいこととは?理学療法士の葛藤と成長を描く

あるある漫画など現場の想いを形にしているのですね。映画「栞」のイラストを通じて映画監督の榊原さんから作品のアドバイスももらったとのことですが、現在の活動において、やりがいや大切にしていることはどんなことですか。

株式会社Work Shiftの代表を務める高木綾一さんや講師陣とともに制作した書籍『リハビリテーション職種の在宅リハビリ・ケア』。福山さんはイラストを担当した

福山さん:医療関係の依頼者から「写真よりもわかりやすい」「イメージを具体化して相手へ伝えることができる」という感想と喜びの声を聞けることで、医療関係イラストの必要性の高さを再認識し、さらなるやりがいを感じています。

疾患等を漫画で説明したチラシを見た患者様からも「とてもわかりやすくて助かります」「絵に温かみがあって親しみが持てます」とご感想をいただけました。

こちらも高木綾一さんの著書『リハビリテーション職種のマネジメント』。福山さんのイラストが「うちの病院でも同じことがある!」と共感を呼んでいる

福山さん:イラストレーターとして大切にしていることは、福之画を設立した思いを基盤として、「人々の健康と笑顔へつなげる作品」であるということです。

さらに、「ご依頼者とともにより良い作品を作り上げていく」ということも大切にしています。取り組みの1つとして、ニーズに合わせてイラストのタッチを変更しています。私は二頭身のキャラクターからリアルな人物まで、さまざまなタッチに描き分けることも強みなので、ご要望に適した絵柄を選択し、制作・提供しています。

喜びの声や感想を実際に聞くことができるのはうれしいですね。理学療法士資格や、理学療法士としての経験、学んだことなどが、今の活動にどのように活かされていますか。

福山さん:依頼が医療関係の専門的な内容であっても、理学療法士としての知識・経験が要望・意図を理解することや、要望以上の作品へと発展させることに活かされていると思います。

言葉だけでは伝えにくいことを具体化することが依頼内容なので、目的はあってもどのような内容にすればよいのか、ご依頼主自身もすべてを伝えることができないことがあります。依頼内容をただ遂行するのではなく、傾聴し目的を明確にすること、積極的に質問と提案をさせていただくことで、依頼主のイメージをまずは具体化し、そのうえで作品を制作していきます。

この一連の流れは、臨床で患者様へ介入する際に大切なコミュニケーションの流れとほぼ同じです。声にならないニーズを捉え、患者様とご家族とともにゴールを目指すというこれまでの臨床経験が、作品の制作にとても活かされています。

加えて、これまでの多職種とのコミュニケーションで知り得たそれぞれの考え方や感情が、作品に登場する人物の台詞や表情等に反映され、臨床のリアルな様子を描くことができています。

今までの臨床経験で得た知識やコミュニケーション力が、イラスト制作にも活かされているんですね。現在の活動を通じて、理学療法士としての仕事にも新しい変化はありましたか?

福山さん:患者様やご家族へ説明する際、言葉だけではイメージが難しいことも、イラストを活用することで理解を得られやすくなりました。イラストにより症状やプログラムの目的・内容等の理解が深まり、不安軽減、プログラム効果の促進等に役立っています。

多職種連携においてもイラストを用いることで、ポジショニングや介助方法等のポイントを正確に伝えることができる等、情報の伝達・共有にも役立っています。

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