【第3回】在宅ワークで緩んだ身体を鍛えよう!~脚力をつける下肢編~
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新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、新しい生活様式が定着していく一方、運動不足による健康二次被害が懸念されています。中でも在宅ワークが増えたことで外出の機会が減り、「体重が増加した」「筋肉が落ちた」など自覚のある方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで今回は、在宅ワークで起こりやすい身体の不調を取り上げ、家の中でおこなえるトレーニングを全4回にわたってご紹介します。
第2回では腰痛を引き起こす姿勢の不調を取り上げて体幹のトレーニングをご紹介しましたが、第3回は下肢を取り上げて、足の筋力低下やむくみを引き起こす原因と対策、トレーニングをお伝えします。お話をうかがったのは、株式会社FiNC Technologies ライフサイエンス室の川村有希子さん(理学療法士)です。
【特集】在宅ワークで緩んだ身体を鍛えよう!
下肢の役割とは?
読者のみなさまの中には、以前よりも歩く機会が減ったことで、足の筋力低下やむくみが気になるという方も多いのではないでしょうか?
体には、細胞の隅々まで酸素を運ぶ血管や、老廃物や余分な水分を回収する「下水管」のような役割のリンパ管が張り巡らされています。長時間のデスクワークでは、股関節周囲の太い血管やリンパ管が圧迫され続けることにより、これらの流れが悪くなり、足のむくみが生じやすくなります。また下肢の血液は心臓に戻る際に重力の影響を受け停滞しやすい特徴がありますが、ふくらはぎの筋肉が収縮することで、ポンプのように血液を心臓に戻す手助けをおこなっています。歩く機会の減少により、これらの作用も著しく低下している可能性があります。
これらにより、いわゆるエコノミー症候群と呼ばれるむくみや血栓(=血のかたまり)ができやすい状態となります。下肢静脈血栓は、できた血栓が脳や心臓に流れ詰まってしまうリスクがあり、命に関わる大変危険な症状なのです。
新型コロナウイルス感染症と下肢機能低下の関係
ロコモティブシンドローム(運動器症候群、通称ロコモ)という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 人間が立つ、歩く、作業するといった、広い意味での運動のために必要な身体の仕組みを運動器と呼び、下肢は運動器として重要な役割を担っています。運動器の障害により、立ったり歩いたりするための身体能力(移動機能)が低下した状態が、一般的に「ロコモ」と呼ばれています。ロコモが進行すると、将来介護が必要になるリスクが高くなり、健康寿命や生活の質にダイレクトに影響を及ぼします。
ロコモは一見高齢者の疾患のようですが、若いからといってあなどれません。実は現代の若い世代は、社会の利便性の発展とともに、今の高齢世代が若かった頃よりも体力や下肢機能が低下していることが知られています。
さらに、コロナ禍による生活の影響も懸念されます。筆者らが2020年5月の緊急事態宣言中にスマートフォンアプリを通じ約4,000名に実施したアンケートでは、新型コロナウイルス感染症の影響により日常生活に変化のあった項目として「運動」が最も多く挙げられ、実に76パーセントの人が「運動不足」を課題と感じていました。運動不足が続くことにより、早期のロコモ発症のリスクが懸念されます。(図)
コロナ禍の新習慣の定着、生活や運動意識にどんな変化が?
(出典:FiNCサポーターアンケート2020年5月実施 回答数:3993)
ぜひ在宅ワーク中は、こまめに立ち上がって歩いたり、意識して下肢を動かすことで、筋力低下や血液の停滞を予防していきましょう。
ウォーミングアップトレーニング
椅子に座って膝を常に曲げていることで縮みやすい太もも裏の筋肉や、動かす機会の少ないお尻の筋肉を伸ばすための、座ったままできるストレッチをご紹介します。伸ばす時間は30秒以上を目指して実施してください。
太もも裏のストレッチ
- 両足を軽く開いて椅子に浅く腰掛け、右膝を伸ばして前に出します。
- 右膝に両手を置き、膝を伸ばし、つま先を上に向けたまま、ゆっくり息を吐きながら身体を前に倒してきます。このとき、背中は伸ばしたまま、股関節から折りたたむように倒すことを意識しましょう。
- 呼吸を止めずに、右の太もも裏が伸びているのを感じながらゆっくりと伸ばします。
- 左側も1〜3を同様におこないます。
お尻のストレッチ
- 椅子に座り、あぐらの姿勢を取るように右足を左膝の上に置きます。
- ゆっくり息を吐きながら体を前に倒します。左手で足首を押さえつつ、右手を使って右膝から太ももにかけて下に押します。このとき、背中は伸ばしたまま、股関節から折りたたむように意識しながら、体重をかけていきます。
- 呼吸を止めずに、右のお尻が伸びているのを感じます。
- 左側も1〜3を同様におこないます。
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