【第1回】みんなのリハビリ体験記~若手リハビリ専門職たちに導かれて、取り戻した日常~
今回からスタートする新企画「みんなのリハビリ体験記」では、ご自身やご家族が、病気やケガによるリハビリをこうやって乗り越えた、こんな素敵なエピソードがあった、現在前向きに取り組んでいる…など、読者のみなさんのリハビリに関する体験談を紹介していきます。
第1回は、5年前にくも膜下出血を発症し、左足と左腕がほぼ動かせなくなった状態からリハビリに励み、日常の生活を取り戻した方の体験談をご紹介します。
【特集】みんなのリハビリ体験記
PROFILE
ペンネーム:KM さん (55歳・男性 )
東京都在住
リハビリのきっかけ:くも膜下出血による左半身麻痺
若手リハビリ専門職たちに導かれて、取り戻した日常
始まりは5年前
5年前、くも膜下出血で倒れた私は手術を受け、術後左足と左腕がほぼ動かせない状態になりました。そして、そこからリハビリの日々がスタートしました。
当時、医師からは「左半身を動かす部分の脳がダメージを受け、脳細胞は再生しないが、脳が今までとは違うネットワークで指示できるようになれば動くようになる」という、実感のわかない説明を受けました。
私は、できなくなった部分に関しては脳がリセットされてしまったので、これから改めて体の動かし方を赤ん坊のように覚えるしかないということだろうと解釈しました。
専門の病院でのリハビリがスタート
手術をした病院で1ヶ月ほどが経ち、何とか車いすに乗れるようになったころ、運良くリハビリテーション専門の病院に転院できることになりました。
専門病院では理学療法士、作業療法士、言語療法士、それぞれ専門職の方々が支援してくれました。理学療法では主に歩けるようになること、作業療法では実生活を想定した細かい動作や物を使う動きを注意しながらできるようになること、そして言語療法では思考耐久性や持続性注意の訓練などをおこないました。
かなり年配の患者さんが多いので、リハビリ専門職のみなさんも大変だと思いましたが、最も驚いたのはそこの病院では20代から30代前半と思われる若手が中心であることでした。当時私は「理学療法士」という言葉は知っていれども、実際にどのような人がどのようなことをしているのか、まったく知りませんでした。
休みなしのリハビリで、社会復帰を実感
専門病院では、朝から夕方まで土日祝日無しで毎日3種のリハビリの時間割が組まれていました。理学療法、作業療法では自分でもリハビリの成果が実感できるので、やる気も出ました。
転院後1ヶ月半頃から、理学療法士さんの付き添いで病院の外に出て歩行練習ができるほどになりました。一時は車椅子の生活を覚悟したので、付き添いありといえども自分の足で屋外を歩いたときは「きっと元の環境に社会復帰できる…」と実感でき、本当にうれしかったことを覚えています。
一歩ずつ、日常の生活へ
その後、リハビリの地道なプロセスにストレスを感じたり、日々焦りを感じることもありました。杖を使って歩けるようになると、一刻も早く退院して復帰したいという思いが強くなったんです。
リハビリのプロセスを急ぐよう医師へ働きかけたり、自分で退院までの計画表(ロードマップ)を作成して病院へ提出したりしました。病院はもしかしたら迷惑に感じたかもしれません…(笑)
それからもしばらくリハビリに励み、担当いただいた各分野の熱心で若きリハビリ専門職たちの導きのおかげで、何とか3ヶ月後には退院できるまでに回復しました。リハビリ専門職の方々は「この前より良くなった」といった日々の前進をその都度話してくれるので、それがとても励みになりました。他に頼れる道標がなかったので、ありがたいパートナーだと感じました。
退院後は通院リハビリと自主リハビリを数ヶ月継続し、倒れてから約7ヶ月後、無事に元の職場へ復帰できました。退院する際、担当の理学療法士の方が自主リハビリの参考にと、私向けのお手製のストレッチ運動指南書をくださいました。
現在は、少し麻痺の感覚は残っているものの、用心のため折り畳み式の杖を持ち歩きながらも普通に生活しています。
現在の楽しみと、これからチャレンジしたいこと
職場では現在、若手社員の人材育成の仕事をしており、日々若者たちからいろいろな刺激をもらっています。プライベートでは、退院後に新しい自転車を購入しました。乗れるようになったときは行動範囲が飛躍的に広がったように感じ、子どもの頃初めて自転車に乗った、あのワクワク感を思い出しました。休日は自転車でリハビリがてら早朝に隣町の大きな公園へ行き、野鳥の写真を撮ったりして楽しんでいます。
また、仕事に復帰した後、中国出張がありました。そのこともあり、いつかまたプライベートで海外旅行に行きたいと思っています。運転免許証も、医師の診断書提出と免許センターでの適正試験を受けて無事に更新することができました。落ち着いたら、国内旅行もしたいですね。以前のようにレンタカーで自由に移動する旅もしてみたいです。
おわりに
今回は、くも膜下出血により左足と左腕がほぼ動かせない状態から、日常生活を取り戻すまでに回復された方の体験談をご紹介しました。20代、30代の若いリハビリ専門職たちに導かれながら、懸命にリハビリに励んだというエピソードが印象的でした。職場でも若手社員の人材育成に取り組まれているとのことで、若い人たちとの関わりがモチベーションやパワーにつながっているのかもしれませんね。
また、現在は自転車に乗り、休日には公園で趣味の写真を楽しんでいらっしゃるとのこと。今後の目標としては、再び国内旅行や海外旅行に行き、レンタカーで自由に移動したいと語られていました。新型コロナウイルスが収束した際には、ご自身の足でいろいろな場所に行くという目標をぜひ叶えていただきたいなと思います。今回ご紹介した体験談が、現在治療中や闘病中の方、リハビリに励んでいる方の励みになったらうれしいです。
次回もお楽しみに。