【第2回】みんなのリハビリ体験記〜未来のために“今きちんと治すこと”の大切さ〜

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連載「みんなのリハビリ体験記」では、ご自身やご家族が、病気やケガによるリハビリをこうやって乗り越えた、こんな素敵なエピソードがあった、現在前向きに取り組んでいる…など、読者のみなさんのリハビリに関する体験談を紹介しています。

第2回は、剥離骨折の再発で野球部を辞めざるを得ないかもしれないという窮地に立たされた方が、リハビリに励み、高校卒業まで野球を続けることができた体験談をお伝えします。

PROFILE

ペンネーム:DF2 さん (27歳・男性

和歌山県在住
リハビリのきっかけ:剥離骨折(裂離骨折)による利き腕の痛み

未来のために“今きちんと治すこと”の大切さ

ピッチャーとして打ち込んできた野球。半年間も投球を禁じられ…

私は学生時代、野球少年でした。中学の頃のチームは人数がそこまで多くなく、ピッチャーだった私は、長期休みには連戦で出場し投球するという日々を続けていました。そんなある日、利き腕の肘に痛みを感じるようになりました。

投球するにつれ痛みも増していったので、念のため病院を受診したところ「剥離骨折」と診断を受け、それと同時に半年間の投球禁止とリハビリテーションを指示されました。

剥離骨折とは、筋肉の急激な収縮により、筋・靱帯・腱と骨との付着部で骨の一部が引き剥がされることで生じる骨折です。

そこで初めて理学療法士の方と出会い、そのような職業があることを知ったのですが、当時はリハビリテーションの意味をまったく理解できておらず、初めのうちは真面目に通ったものの次第に回数が減って、最終的には途中でやめてしまいました。

幸い、一時的な安静が良かったのか肘の痛みも無くなっていたので、投球禁止の指示にも従わず、その後も中学最後の大会まで試合に出場していました。その結果、高校へ入学して早々に肘の骨折が再発してしまったのです。

「同じ目にあってほしくない」理学療法士の思い

再発を機に、通院を再開しました。そこで出会った理学療法士の方に中学生の頃の話をすると、それまでは優しい面持ちだった理学療法士の方の表情が真剣になり、私に言い聞かせるようにご自身の後悔を語ってくれました。

その理学療法士の方も私と同じような経験をして、医師の指示に従わず野球を続けていたことにより、高校野球を途中で辞めざるを得なくなってしまったそうです。

その時は正直、「真面目に取り組んでもらうための方便なんじゃないか?」と半信半疑で、最初のうちはサボることもありました。しかし、理学療法士の方はそのたびに私の両親に連絡し、何度も根気強くリハビリの重要性を話してくれました。

「今を踏ん張れないと、今後もきっと嫌になるときがきたら逃げてしまう。毎回逃げるのを取るのか、今、辛抱するか。それなら今を辛抱して、未来にかけるほうを選ぼう」このような話をしていただいたのを覚えています。

積極的にリハビリに励み、野球に復帰

その熱意を私も徐々に理解し、リハビリの大切さに気づくようになりました。最初はまったくやらなかった自主練習にも積極的に取り組むようになり、その甲斐あってピッチャーとして復帰することができました。そして引退するまでケガなく野球を続けることができました。

最終的にレギュラーは取れませんでしたが、ケガの悪化で野球を辞めざるを得なかったかもしれないと想像すると、ここまで続けられたということが何よりもうれしかったです。

引退後、担当だった理学療法士の方に、なぜあれほどまで向き合ってくれたのかと尋ねたとき、「それが僕たちの仕事でもあり、患者さんに辛い思いをできるだけして欲しくないから」と言われたことは、今でも鮮明に覚えています。

お世話になった理学療法士の方のような存在を目指して

その方との出会いもあって、私は理学療法士を志すようになりました。「今はしんどくても継続していればきっと報われる」という過去の経験を活かし、勉強にも励むことができたと感じています。

まだまだ未熟ではありますが、今では理学療法士として働くことができています。目の前のことだけだった学生時代の私に、未来を見るよう戒めてくれたあの理学療法士の方のような存在を目指して、患者さんと真剣に向き合いながら日々仕事に取り組んでいます。

また、現在も野球は続けています。コロナ禍で今は機会がなくなってしまいましたが、草野球で投手として投げる楽しさを忘れずにプレーしています。今後も野球を楽しんでいきたいと思っています。

おわりに

今回は、剥離骨折の再発で打ち込んできた野球を中断したものの、見事復帰し引退まで続けることができたという方の体験談をご紹介しました。「野球を続けたい」という思いに対し、「だからこそ今は休んでリハビリをするべきだ」と自分事のように寄り添ってくれた理学療法士とのエピソードがとても素敵でした。

現在は、憧れの理学療法士のような存在を目指し、日々患者さんと向き合っているとのこと。リハビリは時に辛いものかもしれませんが、それを乗り越えたご自身の経験がきっと患者様の心の支えになることと思います。

さらに、大好きな野球も続けていらっしゃるとのことで、コロナ禍が落ち着いたらチームメイトとたくさんプレーしていただきたいと思います。

ご紹介した体験談が、現在治療中や闘病中の方、リハビリに励んでいる方の励みになりますように。
次回もお楽しみに。