日常生活は、ほぼ自立しています。
歩行は不安定で手すりなどの支持物が必要です。
【第5回】暮らしに理学療法士の視点を:最適な福祉用具の選び方~座っているときも支えが必要な場合
この連載では、3人のケースを例に専門家である理学療法士が福祉用具の選び方についてアドバイスしています。
最終回となる今回は、座っているときも支えが必要なCさんにアドバイスをしていきます。「家の中の移動」「家の外の移動」「睡眠」「日中の過ごし方(リビング)」「入浴」に対して、それぞれのシーンの困りごとに適切な福祉用具や対応方法について、株式会社くますまの河添竜志郎さん(理学療法士)にうかがっています。
座ることはできますが立ち上がりは介助が必要です。
生活内に介助が必要な場面が多くなっています。
支えのない状態で座っていることができません。
日常生活は多くの介助を必要とします。
座っているときも支えが必要なCさんをサポートする福祉用具とは?
今回取り上げるのはCさんです。支えのない状態で座っていることが難しいため、日常生活で多くの介助が必要になります。そして、ベッドに滞在する時間が長いので、寝たきりになってしまわないようにすること、そして介助側の負担も減らすことが大切です。どのような工夫や予防をすると、Cさんが寝たきりの状態になるのを防ぎ、介助の負担も減らせるのでしょうか。
それでは、今回も福祉用具を使用する方の状況に合わせて、アドバイスをしていきます。以下の4つの「生活を考える上で大切なポイント」を踏まえて、見ていきましょう。
この記事では、それぞれの場面ごとにアドバイスをしていきます。今回は、「家の中の移動」「家の外の移動」「睡眠」「日中の過ごし方(リビング)」「入浴」の5つを取り上げます。トイレに関する内容は個人差が大きいので、ご本人の状態がわかる方に相談しましょう。
家の中・外の移動、日中の過ごし方:車いすをより快適に!
ベッドから離れるためには車いすが必要となります。自力で座ることが難しいCさんは、一般的な車いすでは長時間座り続けることができません。この場合は自動車のシートのような構造の背もたれを使って身体を安定させ、背面や座面にもクッションがあるタイプの車いすがよいでしょう。
このタイプは背もたれが倒れるリクライニング機能、背面と座面が連動して傾くティルト機能、足台を上下させるエレベーション機能など、姿勢調整機能が付いたものがあります。このような機能があると、自分で座り直しができないCさんでも介助を得て座る姿勢を変えることができるため、長時間でも車いすに座っていられます。
ただし、このような車いすは一般的に大型なため、家の中での取り扱いが難しくなります。姿勢調整機能の使い勝手などと合わせて、事前に試してみてから導入しましょう。
また、Cさんは外出する際の自動車のシートへの移乗が難しくなります。このような場合は、車いすごと乗り込むことができる福祉車両を導入すると、家族と一緒にドライブなどができるようになります。福祉車両を用意しているレンタカー会社もあります。遠方への旅行やちょっとした家族旅行などでは便利ですので、ぜひ取り入れてみてください。
福祉用具ワンポイントレッスン① 介助者の負担も最小限にできる福祉用具
“できるだけ車いすに乗せてあげたいのだけど移乗が大変で…!”という声も多く聞きます。在宅生活を続けるためには、特に移乗の介助が介助者の腰を痛める原因にもなりますので、負担が少ない方法を選ぶことが大切です。このような場合は介護用リフトを使うのがよいでしょう。
最近では、介助者の身体を守るといった理由から、病院や施設でも「抱え上げない介護を」ということで介護用リフトの導入が進んでいます。自宅での介護の場合、介助者が腰を痛めてしまえば、代わりの介助者が誰もいなくなってしまいます。そのため、介助者が腰を痛めずに、ベッドから離れる機会を多く作ることができるリフトの導入をお勧めします。
リフトはベッドや浴室といったその場所に適したものだと使い勝手が良くなりますので、理学療法士に相談してみてください。実際の練習によって、ご高齢の小柄な女性でも大柄な夫を簡単に車いすに移乗できるようになりますので、導入が決まったらしっかりと練習してください。
福祉用具ワンポイントレッスン② ベッドでの介助をより楽にするコツ
介助者の負担は移乗ばかりではありません。ベッド上での寝返りや起き上がりの介助も負担が大きいものです。その際には介護用ベッドの機能を十分に活用しましょう。
多くの介護用ベッドは、高さを変えることができます。介助しやすい高さのベッドにすることで、低い位置で介助するよりも腰への負担が軽減します。また、ベッドの背上げを利用することで起き上がりも簡単になりますし、機能を使ってベッドの背や膝を上げて楽な姿勢を作ってあげるとご本人のベッド上での生活も快適になります。
さらに、介助者の負担が大きいものにベッド上での身体の移動があります。ベッドのリクライニング機能の傾斜によってずり落ちた身体を頭側に戻そうとすると大きな力が必要です。このような場合、身体の下に滑り込ませて使うスライディングシートを使うと便利です。
スライディングシートは滑りやすい生地でできており筒状なので、摩擦も少なく、するすると滑って小さな力で移動できます。寝返りの介助にも便利です。ただし、シートの向きや位置が重要となり、ちょっとしたコツが必要ですので理学療法士に相談して練習をしましょう。