PROFILE
武 昂樹(たけ こうき)
■お住まいの都道府県:静岡県
■現在のお仕事:聖隷ケアセンター高丘 訪問看護ステーション高丘
■主な業務内容:訪問業務(主に高齢者や特定疾患者を担当、環境調整、福祉用具調整、家族指導など)
世の中にはたくさんの仕事があります。数ある仕事の中から“理学療法士”を選び、働いている方は、どのような理由や思いでこの仕事に就いたのでしょうか。また、実際に理学療法士として働く場合、一体どんな一日を送っているのでしょう?
この連載では、20代の理学療法士のみなさんに、理学療法士というお仕事についてさまざまなお話を伺っています。中編では病院で働く理学療法士をご紹介しました。
後編となる今回、前編で登場していただいた武さんにご協力いただき、訪問看護ステーションで働く理学療法士の一日のタイムスケジュールや実際に働いてみて感じたことなど、さらに詳しく紹介していきます!
■お住まいの都道府県:静岡県
■現在のお仕事:聖隷ケアセンター高丘 訪問看護ステーション高丘
■主な業務内容:訪問業務(主に高齢者や特定疾患者を担当、環境調整、福祉用具調整、家族指導など)
今回は聖隷ケアセンター高丘 訪問看護ステーション高丘で理学療法士として働く、武さんの一日のスケジュールをご紹介します。理学療法士として訪問看護ステーションに入職して6年目、武さんはどんな一日を過ごしているのでしょうか。将来、訪問で業務をおこなう理学療法士になったら…?ぜひ参考にしてみてください!
6:00 起床
身体のスイッチを入れるために、外を散歩して陽を浴びるようにしています。ランニングをしたり、筋トレをしたりすることもあります。
8:30 始業
一日のスケジュールのチェックと、訪問する利用者さんの情報収集をおこないます。職員に直接聞く必要がある内容は、職員のみなさんの訪問スケジュールを確認し、空いている時間を見つけてコミュニケーションを取ります。訪問の合間に、他事業所との連絡を電話でおこなうことも多いです。
8:50 朝礼・申し送り
朝礼の時にラジオ体操をおこない、身体をほぐします。
9:30 午前訪問開始
午前・午後ともに、2〜3件ずつの訪問をおこないます。基本的には社用車を使用して移動しています。
12:00 昼食
職場で注文したお弁当を食べています。食後に利用者さんの情報共有をすることもあります。私の職場は、基本的に午前の訪問を終えたら事務所に戻り、事務所で昼食を取ります。
13:00 昼礼
昼休み後にも、職員全員で情報共有の時間を取っています。朝礼をおこなっていますが、件数が多いときには、朝礼時にすでに訪問へ出ている職員もいます。昼礼時が最も情報共有がおこないやすい時間のため、大切にしています。
13:30 午後訪問開始
人工呼吸器が必要な方や、神経難病などの進行性疾患の方への支援もしています。
17:30 終業
18:00 帰宅
夕食を済ませ、入浴後に読書をするなど、なるべく心と身体を休めるようにしています。読書では理学療法に関する内容に限らず、あらゆる分野の本を読みます。
22:00 就寝
訪問看護ステーションに入職して6年目の武さんに、現在の職場や、就職活動、実際に働いてみて感じていることなどについても質問をしてみました。
現在の職場を選んだ理由や、決め手となったことは何ですか?
現在の職場で働くきっかけとなったのは、前の職場から異動の話をもらったことでした。そのため、正直に言うと希望していたタイミングではありませんでした。前の職場は理学療法士の資格を取得し、就職してからわずか2年間の勤務だったので、もう少しここで働きたいなと思っていたんです。また、2年しか経験がない自分が訪問の分野へ移っても大丈夫なのかという不安もありました。
しかし、将来的には在宅のリハビリにかかわってみたいというビジョンがあったので、決心しました。現職場は4年目に入りましたが、今では訪問に携わることが出来て良かったと思っています。
就職活動はどのように進めましたか?
学生時代は、地元で回復期リハビリに携われる病院が良いなと考えていました。就職先は臨床実習でお世話になった病院や、大学でおこなわれていた就職説明会などを通じて情報収集をしました。また、大学の先生方にも相談に乗っていただきました。
就職先に決めた聖隷福祉事業団は、実習先ではなかったため、施設見学会に参加し情報収集をしました。
働く前と働いた後、ギャップはありましたか?
訪問看護で勤務する前は、回復期病棟で勤務をしていたため、ケガや疾患の治療が落ち着いて身体機能や日常生活動作(Activities of Daily Living:ADL)が回復していくステージにいる方を中心に支援していました。まさに私が理学療法士として働く前の“リハビリテーション”のイメージに近かったです。
しかし、訪問では、加齢や疾患によってADLが低下していく方々の社会生活への復帰を支援することが多いです。そのため症状を改善するリハビリが実現しにくい現実に、ギャップを感じることもありました。
1年目の頃に比べて、自分が成長したと思うところはありますか?
利用者さんを支援するための方法が多様にあることを知り、視野が広くなったことを自覚しています。1年目の頃は、担当した方をとにかく良くしなければという使命感に駆られていました。でも、退院後の生活は、入院中とは異なる課題が待ち受けているんですよね。
現在は「プランB」「プランC」…と、さまざまな支援方法を考え、柔軟な対応ができるようになったと思います。在宅リハビリを担当し、居宅介護支援事業所や地域包括支援センター、福祉用具業者など他職種の方々とかかわる機会が増えてから、視野が広がったと感じています。
現在の職場で働いていて良かったと思うところは何ですか?
1つ目は、利用者さんと長期的にお付き合いすることが多いため、利用者さんの人生の一部にかかわらせていただいていると思えることです。2つ目は、看護師と近い関係性で勤務でき、医療職種以外の他職種とも連携する機会が多いため、自身の視野が広がり、利用者さんを支援する方法に多様性があると理解できたことです。
病院以外にも理学療法士が活躍する場所はありますが、訪問看護の業務はこんな人に向いている、というポイントがあれば教えてください。
利用者さんの目線に立って支援することを忘れない人、正解がない世界で常に利用者さんにとって何が最善の支援となるのか考え抜く力を持つ人だと思います。
訪問看護ステーションの利用者さんの中には、進行性疾患を抱えながら一生懸命自分らしく生活している方が多くいらっしゃいます。生命維持のために人工呼吸器を装着するなど、時には利用者さんにとって辛い決断をする時期も支援をしなければなりません。利用者さんの意思を尊重し、どんな状況でも利用者さんや家族にとって最善の支援策は何かを考えることが重要です。これには最善の策はありますが、完璧な正解はありません。
武さん、今回はご協力いただきありがとうございました。
武さんが理学療法士になった理由や、現在の仕事のやりがい、今後の目標などは、以下の記事でも伺っていますので、こちらもぜひご覧ください。