【前編】私たちが理学療法士になった理由~現役理学療法士がお答えします!

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世の中にはたくさんの仕事があります。数ある仕事の中から“理学療法士”を選び、働いている方は、どのような理由や思いでこの仕事に就いたのでしょうか。また、実際に理学療法士として働く場合、一体どんな一日を送っているのでしょう?

リガクラボでは20代の理学療法士4名に、理学療法士になろうと思ったきっかけや、現在の仕事に対する思い、仕事のある日はどんなスケジュールで一日を過ごしているのかなど、“理学療法士のあれこれ”についてお話を伺いました!

今回より3回の連載でご紹介していきますので、理学療法士をよく知らないという方にはより身近に感じていただき、理学療法士を目指している方には、先輩たちの意見をぜひ参考にしていただけたらと思います。

プロフィール

今回お話を伺った、4名の理学療法士のみなさんをご紹介します。
※以下、お名前/年齢/お住まいの都道府県/勤務先/業務内容の順で掲載しています。

  • 木戸 孝史さん:24歳/福岡県/病院勤務/急性期のリハビリテーション(内部障害や整形、中枢疾患など幅広い疾患の入院患者を担当、急性期治療中から廃用予防や機能回復、自宅退院を目標にリハビリ介入など)
  • 武 昂樹さん:27歳/静岡県/訪問看護ステーション勤務/訪問業務(主に高齢者や特定疾患者を担当、環境調整、福祉用具調整、家族指導など)
  • 山田 宮子さん:25歳/神奈川県/病院勤務/回復期のリハビリテーション(外出訓練、家庭訪問、家族指導、家族への情報提供など)
  • 森田 捷平さん:26歳/兵庫県/国立循環器病研究センター勤務/急性期のリハビリテーション(脳血管疾患、心疾患の入院患者を中心に担当、離床練習、日常生活に必要な歩行等動作練習の提供、転院先への情報提供など)

理学療法士になった理由・きっかけ

まずは、みなさんが理学療法士を目指した時期、資格を取得した時期を教えてください。

木戸さん:理学療法士を目指そうと思ったのは、高校2年生の冬でした。その後、2019年に理学療法士国家試験に合格し、資格を取得しました。

武さん:私は高校2年生の夏頃に理学療法士を目指すことを決め、2016年4月に資格を取得しました。

山田さん:私は大学2年生の夏です。資格を取得したのは2019年5月です。

森田さん:高校3年生の春に理学療法士を目指し始め、2018年4月に資格を取得しました。

理学療法士になろうと思ったきっかけはどんなことだったのでしょう?

木戸さん:高校時代、野球部に所属しており、試合中のケガで肩の手術をすることになりました。そこで理学療法士の方にお世話になったのがきっかけです。当初は自分がお世話になった理学療法士のように、スポーツへの復帰の手助けをしたいと思っていました。

しかし、大学在学中の大学病院での臨床実習で、さまざまな疾患をお持ちの方々と関わる機会があり、リハビリテーションはスポーツ復帰だけではないこと、患者さんそれぞれの目標に向かってアプローチする方法が無数にあることを学びました。そこに楽しさを感じて、現在に至ります。

武さん:高校の部活動でラグビーをやっており、筋力がつくなどトレーニングを積む過程で自分の身体が変化することに関心を持っていました。また、高校3年生のときに半月板を損傷し、人生初の手術を経験しました。これらの経験から、運動が身体へ与える影響や、身体が不自由になった後の復帰を助ける仕事に興味を持つようになったんです。

また、テレビドラマの影響もあって“医療職に就けたらかっこ良いな”という思いを抱いていました。そんなとき、母から理学療法士という職業があることを教えてもらい、自宅から通える距離に養成校もあったので、理学療法士を目指すことにしました。

山田さん:私は元々理学療法士になろうと思っていたわけではなく、「人間の身体ってどうなっているんだろう?」「どうしたらケガをせずに過ごせるだろう?」という疑問があり、筋・骨格や運動学を学ぶために理学療法士の養成学科に通い始めました。入学当初は人体にかかわる基礎研究をおこないたいと考えていたので、理学療法士になるという強い気持ちはありませんでした。

理学療法士として働こうと思ったきっかけは、大学2年生のときの実習で、勉強して得た知識が現場で活用できる喜びを知ったからです。同時に、より多くの技術を習得し、社会貢献をしたいとも考えるようになりました。病院に来られる患者さんは何らかの形で人生の岐路に立っている状態だと思います。その状況や気持ちに寄り添い、正解のない答えを探していくこの仕事は責任が重く、時に苦しいですが、やりがいを感じています。

森田さん:理学療法士という職業を知るきっかけを与えてくれたのは両親でした。両親ともに以前、医療機器商社に勤めていたことがあり、自分が将来に対して悩んでいたときに、「医療はどんなことがあっても必要不可欠で、働き続けられる」とアドバイスをくれました。この言葉をきっかけに、私は医療の世界に飛び込みました。

大学入学後は、毎日が驚きの連続で、 リハビリは身体だけでなく、対象者の生活や動作、趣味、生きがいまでみるなんて想像もつきませんでした。1回生前期の講義で「コミュニケーション論」というタイトルを見たときは、口下手で人見知りの私にこの仕事が続けられるのか、とても不安になりました。しかしすぐに、人とコミュニケーションをすることの多いアルバイトを始めて、自分なりに少しずつ努力していった思い出があります。

理学療法士として実際に働いてみてどうですか?

みなさん、ご自身のケガやご両親の影響などいろいろな経験や思いがあって理学療法士になられたのですね。理学療法士として、現在はどのような業務を中心におこなっていますか?

木戸さん:うちの病院では理学療法士は呼吸器・循環器・運動器・中枢チームと4チームに分かれており、入社後4年間は半年ずつ各チームを2巡するんです。そのため、幅広く多くの疾患を経験・担当させてもらえます。

現在(令和3年7月時点)は運動器チームに所属しており、外傷で搬送された方や変形性膝関節症、変形性股関節症等の整形疾患術後(骨や関節など運動器の疾患の手術後)の患者さんを主に担当し、社会復帰を目標にリハビリを提供しています。

武さん:現在の主な仕事は訪問業務で、1日4〜6件の訪問をおこなっています。訪問では福祉用具等による環境調整、身体のコンディショニング、運動指導、家族への指導などを通じて、さまざまな支援をしています。利用者さんは高齢者が中心ですが、小児や若年者で神経難病などの進行性疾患の方もいます。また、利用者さんの支援に関する内容を、居宅介護支援事業所や地域包括支援センター、福祉用具業者などと共有し、多面的な支援もおこなっています。入院した際には病院とも連携し、スムーズな在宅復帰になるようにサポートしています。

このほか、週1回ペースでデイサービスの業務も兼務しています。数は少ないですが、高齢者に対する支援と、地域づくりに向けた話し合いをおこなう地域ケア会議に参加することもあります。また、立ったり歩いたりするための身体能力が低下する状態、ロコモティブシンドロームを予防する体操を地域住民に指導する担当者の育成もしました。

山田さん:私は病院勤務なのですが、基本的な業務としては、筋力トレーニングなどの運動療法や、理学療法士の手を使って直接関節の動きや筋肉の柔軟性などの機能の改善を図る徒手療法等の治療により、患者さんの運動機能向上・痛みの緩和を図ることです。屋外での練習では、歩行や実際の生活に即した外出訓練など、日常に必要とされるさまざまな動作の練習を実施しています。

加えて、自宅へ復帰予定の患者さんの家庭訪問を事前に実施し、退院時の問題点や退院後の生活のイメージを具体化することで、より充実したリハビリを目指しています。現在は新型コロナウイルス感染症の関係上、業務の制限がありますが、患者さんのご家族などにも個別で指導をすることがあります。

森田さん:私は急性期の脳血管疾患や心疾患の患者さんを中心に、リハビリを提供しています。SCUやNCUといった集中治療室で治療がおこなわれている、発症間もない患者さんを対象にしていますので、十分なリスク管理が不可欠です。その後、一般病棟に移ってからも、リハビリテーション室でおこなえるリハビリを患者さんの状況に合わせてプログラムを作り、進めています。

また、入院から退院・転院までのフォローや退院後の生活状況、転院の必要性の有無を、退院調整をおこなう看護師や医療ソーシャルワーカーと連携しながら検討することもあります。

多岐にわたる業務に、日々奮闘・邁進しているみなさんの姿が目に浮かびます。当初ご自身が目指していた“理想の理学療法士”に向かって、業務の中で心がけていることや、目標にしていることなどはありますか?

木戸さん:患者さん自身の機能障害が徐々に改善してきていることをしっかりご本人にお伝えすることで、リハビリをして良かった、リハビリって楽しいと思ってもらえるように日々心がけています。

一方で、多くの患者さんを担当させていただきますが、知らない疾患や病態、治療法などがあると、知識不足であることを痛感します。経験したことのない症状に対し、リハビリのアプローチをどうすればいいのか悩むことは多くあり、情けなく感じることもあります。

今の目標としては、以前呼吸器外科を担当していた際に感じた疑問点について研究等を行って、今後のリハビリに活かしたいと考えています。また、うちのリハビリテーション部では、将来どの分野を中心に担当したいかを決める必要があるので、今後もより多くの疾患を経験し目標を決めていけたらと思っています。

武さん:私自身、今の時点では、目標としていたかっこ良い理学療法士になれた…と言うことは難しいです。テレビドラマのように、自分が担当した利用者さんの悩みを次々に解決していくことは簡単ではありません。利用者さんの支援を続ければ続けるほど、現実は厳しく、力不足を感じますし、自分は社会に貢献できているのかと自問自答する日々です。

あくまで自分の夢ですが、いずれは個別支援だけでなく、地域住民が柔軟に支え合って生活ができる“まちづくり”に関わってみたいと考えています。老若男女問わず住民同士が助け合い、その中に医療専門職が存在し、すぐに相談や介入ができるまちがあったら理想的だと思います。地域の困りごとに対して、すぐに駆けつけられる理学療法士が存在すると良いですよね。

山田さん:今は、患者さんの希望する、患者さんらしい生活を提供できるように日々努力しています。技術や人間的な経験値は、まだまだ至らない所が多いですが、自分なりに患者さんの気持ちを理解しようと努めています。

私には、技術的な部分と人間としての経験値が足りていないと感じています。経験値はすぐに身につけられるものではありませんが、まずは患者さんの希望に合わせ、機能を改善させる技術を身につけたいと考えています。どんなに患者さんの気持ちを理解しても、それを機能改善につなげられなければ理学療法士として働いている意味がありません。患者さんに正しく、効率良く努力してもらえるようお手伝いしていきたいです。

森田さん:小さな頃から医療に関心を持ち、自分で決めた職業に就けているという点では、夢を叶えられているのかなと思います。ただ、当時は「医療系だったら何でもいい」と漠然とした考えしか持っていませんでした。

そんな私が初めてこの仕事を選んで良かったと思えたのは、離島の慢性期病院に入職してからのことでした。あるとき、脊髄障害で車椅子生活を余儀なくされた患者さんに「ここ(離島)だったら、ここのリハビリが一番だって聞いたから(この病院を選んだ)」と言ってもらったのです。この方の期待を裏切ることや、今までの先輩方が汗水たらして頑張ってきた努力や業績に泥を塗るわけにはいかないと、必死になって病気のことを勉強して、治療などに取り組みました。この経験から、この仕事に対して自信を持つことができ、また、やりがいや楽しさを強く感じました。

今後は、急性期でより多くの経験を積みたいと思っています。また、高齢者や障害を抱えた方々が、疾患を抱えて生活に満足できなくなっている現状を肌で感じています。何に満足できなくなっているのか、どうすれば満足に近い形を提供できるのかを研究したいと思い、大学院への進学を考えています。

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