【後編】パーキンソン病と上手に付き合う~運動と転倒予防のポイント~

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パーキンソン病のリハビリテーション~相談先をご紹介~

近藤先生:リハビリテーションは、対象者がより満足度の高い生活を再び獲得するための過程を指します。運動療法(運動を行って障害や疾患の治療を行う方法)は、パーキンソン病のリハビリテーションに重要な要素の一つですが、リハビリテーション全体の一部分に過ぎません。
例えば、テーマパークに行くことを目標としている方の場合を考えてみましょう。運動療法を通して機能を改善して目標を達成させるアプローチも、車椅子を導入して目標を達成するアプローチも、どちらもリハビリテーションの選択肢となります。運動療法だけでは改善が難しい部分は、人的支援や福祉用具などの社会資源を適切に活用し補います。このように、その方の価値観や人生観を踏まえた選択をしながら、より良い生活の実現を目指していくのがリハビリテーション医療です。

リハビリテーションは個人の身体機能や環境を配慮して、その人らしいより良い生活を支援するのですね。診断を受けた後、リハビリテーションを受けたい場合はどこに相談すれば良いでしょうか。

近藤先生:リハビリテーションを受けるためには、まずは主治医(脳神経内科医)に相談してみてください。
また、パーキンソン病の初期では、日常生活に支障が出ないことが多く、そのため医療保険でのリハビリテーションを受けることが難しい場合があります(主治医が必要と判断した場合にのみ、医療保険でのリハビリテーションを受けられます)。このような場合は、これまでお伝えした運動のポイントに注意しながら自主的な運動を継続してください。お近くの理学療法士に相談してみるのもよいと思います。

1人で悩まず相談をしよう―近藤先生からのメッセージ―

本記事を通して、パーキンソン病について初めて知った方も多いと思います。読者の皆さんに対して近藤先生からメッセージをお願いいたします。

近藤先生:近年、世界的に患者数が増加しているパーキンソン病は、もはや誰にとっても無関係とは言えない身近な病気です。パーキンソン病は「難病」に該当し、「難病」と聞くと不安を感じる方もいるかもしれません。しかし、世界中の研究者や製薬会社がこの社会的な課題に向き合い、新たな治療法の開発に熱心に取り組んでいます。現代の医療技術の進歩により、パーキンソン病の治療は大きく進歩しています。効果的な治療薬が多数開発され、適切な治療を受けることで、確実に症状の改善が期待できます。実際、症状が改善しない場合は、診断を見直す必要があるとさえ言われているほどです。

一人で悩まず、ご家族や医療従事者と相談しながら、ご自身に合った対処法を見つけていきましょう。そして、希望を持って前を向いていただきたいと思います。自分らしい生活を送りながら、いつか完治できる治療法ができるまで、動ける身体を今から作っておきましょう!

※この記事は、2025年4月16日時点での情報で作成しています。
以下を参考に作成しています。
※1:Johansson ME, Cameron IGM, Van der Kolk NM, et al. Aerobic Exercise Alters Brain Function and Structure in Parkinson’s Disease: A Randomized Controlled Trial. Ann Neurol. 2022;91(2):203-216. doi:10.1002/ana.26291
※2:Portugal B, Artaud F, Degaey I, et al. Association of Physical Activity and Parkinson Disease in Women: Long-term Follow-up of the E3N Cohort Study. Neurology. 2023;101(4):e386-e398. doi:10.1212/WNL.0000000000207424

おわりに

前後編にわたり、神経難病を専門とする理学療法士からパーキンソン病の概要や転倒の要因、対策などをご紹介しました。
後編の記事を通して、症状日誌を活用して症状の変化を把握することや運動を始めることの大切さを知りましたね。この記事をきっかけにパーキンソン病の理解や転倒予防の対策などを見つけていただけたら幸いです。
リガクラボでは、健康や医療の情報以外にもご自身やご家族がケガや病気の治療で理学療法を受けた方の体験談もご紹介しています。ぜひご覧ください。

【第1回】私と理学療法~封入体筋炎を発症、筋肉の萎縮に負けず運動に励む日々~ 【第3回】みんなのリハビリ体験記〜目標と希望が見えた小児がんのリハビリテーション~
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転倒予防のための運動やそのポイント

PROFILE

近藤 夕騎(こんどう ゆうき)理学療法士/修士(健康科学)、博士(工学)

近藤 夕騎(こんどう ゆうき)理学療法士/修士(健康科学)、博士(工学)

専門分野:リハビリテーション、理学療法、パーキンソン病

2014年理学療法士免許取得。
同年、国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター病院に入職。2025年から関東学院大学 理工学部 健康学系/専任講師。神経筋障害認定理学療法士、神経理学療法専門理学療法士。